元アニメーターが語る、「ウルトラマンオメガ」総括と感想

感想文

 先日、最終回を迎えた『ウルトラマンオメガ』。記憶喪失のウルトラマンという斬新な設定に、毎週夢中になったファンも多いのではないでしょうか。 

 この記事では、個人的に特に心に残った「ソラトという主人公の成長」と「ウルトラマンらしい最終回の展開」について、ネタバレありで深掘りしていきます。

記憶のない神様、オメガ=ソラトの成長

 ウルトラマンオメガは、記憶喪失の主人公ソラトが様々な人と出会うことで多くのことを学び、次第に「守りたいもの」を見つけていく物語です。

 記憶喪失のヒーローといえば、『仮面ライダーアギト』の主人公・津上翔一を思い浮かべます。ただし、翔一が記憶を失ってもまだ常識人だったのに対し、ソラトは非常に非常識な言動をとる、まるで子供のような男でした。

 第1話では他人の食事を勝手に食べてしまうし、重たい土嚢を軽々と遠くへ投げ飛ばすなど、相棒のコウセイを困らせることが多かったですね。さらには野菜スティックを食べては「苦い」「味が薄い」と不満を口にする始末(笑)。ヒーローは子供たちのお手本にならなきゃいけないのに、野菜嫌いはちょっとまずいのでは…と思いつつも、それでも「やさしい人を守りたい」という正義感はしっかり持っていました。

2クール目からの衝撃的な急展開

 そんなソラトのおかげで、1クール目は比較的明るいヒーロー番組という感じがしました。しかし、2クール目に突入すると急展開を迎えます。この頃にはソラトも常識人化してきた矢先、彼の前に「もう一人のソラト」が姿を現すのです。

 それを見て次第に怯えだすソラト。ネタバレになりますが、その正体は記憶を失う前の本来の人格「オメガ」でした。 

 オメガ=ソラトは、地球を外部からの侵略者から保護するが、それ以外には手助けをしない「宇宙観測隊」でした。つまり、人類を救いも滅ぼしもしない、神様のような存在だったのです。第22話に登場した「ゲネス人アーデル」から過去の秘密を聞かされ、ソラトはウルトラマンに変身して(立体映像ではありますが)恩人であるアーデルを叩き潰してしまいます。この場面には私もショックを受けました。

ソラトとオメガ、二つの人格の対立

 その次の第23話では、ウルトラマンに変身しようとするソラトと、変身を阻止しようとするオメガの対立シーンがありました。「記憶を失ったことで一つの体に2つの人格が形成される」という展開は、まるで『仮面ライダービルド』の主人公・戦兎を彷彿とさせます。

そしてこの23話で、オメガとしての人格が完全に蘇り、人類の前から姿を消してしまいました。

ウルトラらしさのある斬新な最終回

 第24話では、前半パートで最強怪獣ゾドラとウルトラマンの戦闘シーンがあります。しかし、ある程度様子見した後、オメガはすぐ姿を消しました。

 これはヒーローものでよくある「敵が強すぎるための一時撤退」ではなく、「地球を滅ぼすほどの脅威ではない」というオメガの冷静な判断によるものです。この結果、ソラトの仲間であるホシミコウセイたちは、人類の力で怪獣と戦うことを決意します。

 地球を見守るために街をぶらつくオメガ。しかし、第1話でコウセイが助けた親子が、今度はおばあさんに親切にしている所を目撃します。人々の優しさに触れ、段々とソラトの人格が蘇ってくるのです。

 そして23話と同じように、ウルトラマンに変身しようとするソラトと、阻止しようとするオメガの対立が再び始まりました。 だが、人と手を結ぶことの大切さに気づいたことで、ウルトラマンになることを決意します。それを見ていたコウセイが嬉し涙を浮かべます。

地球人と宇宙人の「融合」

 ソラトとしての人格が蘇ったウルトラマンオメガとコウセイは協力して怪獣ゾドラと戦います。しかし、ゾドラの強力な攻撃技により大爆発が発生。なんと、ソラトとコウセイは実質一度命を落とすのです。

 二人は魂だけの存在になり、今まで過ごした職場兼宿の倉庫にいました。そこで二人は今まであったことを話しながら思い出に浸る場面は、見ているうちに切ない気持ちになります。

 そして、「みんなを守りたい」気持ちが強くなったコウセイは、なんとここで、ソラトと一緒にウルトラマンオメガに変身するのです! この怒涛の展開には驚きました。

 ウルトラマンオメガ=ソラトは「地球人になりすました宇宙人」という『ウルトラセブン』タイプでしたが、最終回で「地球人と宇宙人の融合体」という初代『ウルトラマン』タイプに変わったのです。今までのシリーズでは一つのタイプを最後まで突き通してきたので、この変化は非常に斬新に感じました。

 『ウルトラマンオメガ』は、記憶という「繋がり」を失った神様が、地球人との出会いによって新たな「絆」を見つけ、本当のヒーローになっていく物語でした。

ソラトとコウセイ、二人の絆がオメガという存在を完成させたラストは、まさに「ウルトラマン」というシリーズが大切にしてきたテーマそのものだったと思います。本当に素晴らしい作品でした!

まさに令和の『ネクサス』! 現代の限界に挑んだ「大人向け」の作風

 大人向けのウルトラ作品といえば『ウルトラマンネクサス』が有名ですが、この『ウルトラマンオメガ』も、その名に相応しいハードな魅力に満ちた作品でした。

 先ほど1クール目を「明るいヒーロー番組」と表現しましたが、実は第5話「ミコとミコト」のような、胸を締め付けられる悲しいエピソードも存在します。この回に登場した「オオヘビヌシノミコト」は、かつてのジャミラやダークファウストを彷彿とさせる、まさに悲劇の怪獣でした。

本作の特筆すべき点は、登場する人間がすべて「善人」ではないというリアリティです。

 第1話の怪獣災害の際、救急隊員に詰め寄って怒鳴り散らし、近くで怯える子供に見向きもしない自己中心的な大人たちの姿。さらには第9話のカネナリや第21話の雷音寺など、怪獣よりも厄介で醜悪な人間たちが、主人公のコウセイやアユムを幾度となく追い詰めました。

 こうした人間の「負の側面」を目の当たりにしながらも、それでも人間を守ろうと葛藤したソラトの姿には、改めて深い敬意を表したくなります。

 物語終盤、ソラトが本来の人格である「オメガ」に怯え、悲鳴をあげる描写は圧巻でした。最終的にソラトという人格が一度消滅してしまう展開を含め、「これは本当に子供向け番組なのか?」と、いい意味での疑問と衝撃を禁じ得ませんでした。

 また、戦闘演出においても、かつての『ウルトラセブン』を彷彿とさせる、怪獣の首が切断されるようなハードな描写が(間接的ではありますが)取り入れられていたのも印象的です。さらに「ネクサス」では「怪獣が人を捕食する」シーンが多かったですが、「オメガ」では「怪獣が怪獣を捕食する」シーンがありました。これもこれでショッキングでトラウマになります。これらは、現代のテレビ放送における表現の限界に挑もうとした、制作陣の強い意志を感じさせるものでした。

『ブレーザー』を超えた、真の大人向けウルトラマン

 2023年に放送された『ウルトラマンブレーザー』も、そのミリタリー路線のリアリティから「大人向け」と評価する声が多い作品でした。

 しかし、記憶と人格の崩壊、そして人間の醜さと尊さを真正面から描いた本作こそ、個人的には「これこそが令和の大人向けウルトラマンである」と断言したいです。

 以上が私なりの「ウルトラマンオメガ」の総括です。見なかったことを後悔している人達にも、参考になれば幸いです。